「スピリチュアルにハマった友人」に悩む、すべての人に言いたいこと 2
一方、それらの教えに出会って元気になった(ように見えた)Aちゃんだが、しばらくするとまた鬱状態になり、当時勤めていた会社を辞めた。
彼女が元気になったのは、セミナーによって生きやすくなったからではなく、躁状態だったからかもしれない。私とAちゃんは住んでいる場所が遠く、会うのは数年に一度。近況はSNSで知るくらいなので、精神状態を推し量るのは難しかった。
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いつの頃からか、彼女はスピリチュアルな世界にもハマっていった。
アメーバブログのカウンセラー界隈はスピリチュアル界隈とも親和性が高く、それぞれのジャンルの有名人同士がイベントで共演したりしているのだ。それらの有名人に影響を受けた人たちが、カウンセラーやセラピストや占い師を名乗り、ブログで集客してセッションでマネタイズしている。
まだ何も成していないように見える無名の一般人が「幸せを引き寄せるセミナー」などを開催しているわけだが、Aちゃんの周囲にもそういう人が少なからずいた。
Aちゃんはたびたび「引き寄せの法則」を話題にした。本人の行動の結果としか思えない出来事でも、彼女は「引き寄せた」と言う。自分の身に起こることはすべて自分で選んでいる、という考え方らしい。苦労の多い家庭に生まれてきたことも、「生まれる前に自分で決めた」と解釈しているようだった。
波動、オーラ、前世、水星逆行、アセンション……。彼女のSNSに並ぶ言葉は、どんどん私の日常から遠いものになっていった。
その後も、Aちゃんは躁と鬱を繰り返していた。躁のときはハイテンションで、「お金は使えば入ってくる」と散財したり、「心の赴くままに生きよう」と積極的に新しいセミナーやセッションに参加する。しかし鬱になると一転、寝込んで生活もままならなくなる。
自己啓発やスピリチュアルにハマっても、彼女の波がもたらす生きづらさは何も変わっていない。良くも悪くもなっていないので、ある意味では現状維持だ。少なくとも、私にはそう見えた。
講談社 ライター 吉玉サキ より転載